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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
お母さんは、近いうちに、私を宮島見物につれて行って下さるそうです。こちらへ来る迄、私は父上のことも心配だったし忙しくて忙しくてひどかったし、着いて、お父さんのお笑いなさる顔を見て安心したら、何だかポーとなって、久しぶりで、まるでのんきな休まる気分です。お母さんの娘になって、少し遠慮しながら甘ったれて、冗談を云って笑って、真面目な相談もして、そして夜は十時すぎにもう寝て、それでも朝九時頃まで眠ります。どうも、眠くて眠くて。それは眠いの。あなたに、これだけ書いて、家の中の空気おわかりになるでしょう? 林町がああ腰をぬいて暮して居るし、私はキリキリまいをしているし、ここでは、お母さんを中心に活々と軸がまわっていて、又別な楽しさ、安らかさです。
今度来て本当によかった。
お医者も特別に誰というお好みはありません。しかし、お父さんは昼間お眠りになりすぎます。これは、やはり全体の御衰弱ですから、余り油断はならないと思います。あなたの方はずっとおよろしい方ですか? 食慾も出て居りますか。どうか、どうか、お大切に。ここにいると何だか遠いようです。私はこちらですっかり疲れをなおします。