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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
達ちゃんは、かえって来た当座は、自分が二年兵で初年兵を命令にしたがえていたその癖で弟と一緒が却ってうるさいようだったのだそうです。それでも、お母さんの舵とりよろしく、今日では互に扶けあうが、やはり兄弟は面白いものね。兄さんの方が全責任を負う(雇人対手のように)気にならず、隆がこう云ったからなど云い、ごたつくこともある由。でもいいのですよ、結局は。
あなたは何日頃こっち宛の手紙を下すったかしら。お目にかかったのは三月の十五日でしたが。――
私は二階の、裏山の見える方の窓の下に机をおき、本をよんだりこうして手紙をかいたり。きのうあたりから一日に三四時間ここで暮します。私は四日にお父さんのために臥ていて外が見えるように、茶の間の障子を作りなおしたのが出来て来るから、それを見たら五日頃かえることになりましょう。私は令名サクサクな東京の奥さんなのですが、仕事をエイヤッとするにはやはり東京がよろしい。そして、もしお父さんの工合がよかったら夏、虹ヶ浜でお暮しになるようにしてもよいと考えて居ります。御機嫌はいいことと思って別に伺いませんでした。きのうあたりから又寒い。