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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
ここに暮していると小説的な風に感情が押される。
こっちの風景は明媚であるけれども、景色そのものが自身で飽和している。そこから或るつまらなさ。北方の荒涼として情熱的なところがない。それでいてこの辺は乾いている。
[自注11]組合――隣組のような町内の組合。
[自注12]あの家――顕治が学生時代夏をすごした家。
四月十日夕 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕
四月十日 午後 暖い晴天。島田からの一番終りの手紙(第五)
私は五日頃かえるように云っていたからもうこちらへは手紙を下さらないのかもしれない。店で、お母さんがあなたに上げるとおっしゃる肌襦袢を縫っていると、「ユービン」と云って河村さんへ自転車にのった若者が何か入れてゆくのが見えました。河村さんに郵便が来てこっちに来ないのは大変不思議に思えた。そして、又縫っていたら河村さんの細君がキビの餅をもって来てくれ、達・隆はそれを頬ばって仕事に出てゆきました。
この河村さんの娘が結婚している写真屋さんに来て貰って、二三日後一家全員で写真をとり、大さわぎでした。あなたにお目にかけるために。七日に、背戸を見晴すガラス戸が出来上り、大満足です。