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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
うんと金をつかってどういうものをみてくるか。咲は六ヵ月のぽんぽで、国ちゃんがとけたら迎えに行くと云ったってもうその時は動けないし、といって居ります。まあ大丈夫でしょうが、今度は。行ってかえる間は。あっちに出張所でもできるようになると深刻な問題を生じます。そうなったら大いに考えなければなりません。こんな形に世相が出るのですね。
達ちゃんの本のこと。字引は高野辰之編(と称する)よいのでありました。
この頃日向は風がないと暖かね。きのうは荒々しい天候でゴッホの春の嵐の絵が思い出されました。黒い密雲と射しとおす日光の条。往来で、オート三輪のフロントガラスがキラリと閃いたりして。やがて青葉。そういえば、土管おきばのよこの枳殻の木はどうしたかしら。今年も白い花を咲かせるかしら。サンドウィッチは五十銭だそうです。ブッテルブロードさしあげます。ではお大切に。
[自注4]ウエストンさんの説の誤りを正してやっている文章――マルクスの著作。
[自注5]この筆者の親友――エンゲルス。
[自注6]十番以内――面会順の番号。
[自注7]小説のことはいろいろと経験になって大変有益でした――「その年」