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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

こういう風な読書力がつけば、文学評論の古典もやがて読んでゆけるでしょう。億劫がらず。実にひどい読書力ね。何と女でしょう。たすきかけて、前かけかけて(ああ思い出した、ユリが、かえると云って前かけかける、と笑われたこと)一寸ぱたぱたやってフーとすぐぐったりとしてしまうような。

私はどんなつまらない小説でも小説でさえあれば、あとからあとからよんであきない、というそういう風な本好きではないのです。又、随筆的境地でもない。だから本当の読書力がつかないと、妙なことになります。

おかあさんからお手紙が来ました。隆ちゃん案外に早く五月初旬渡支ではないかとの由です。四月二日に面会にいらして様子知らして下さるそうです。本年は二回に入営させ、一回(隆ちゃん)は一月。二回分は五月初旬の由。一回分はいられませんから。そうしたら私は五月のとりつきか四月下旬に行かなければなりませんでしょうね。六月六日までの間に一度かえることになりましょうか、居っきりでしょうか。考えておいて下さいまし。行ってかえり、又行く。それも大変です。けれど。

四月一日から島田村が周南町と改名になります。