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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

きのうおかあさん、隆ちゃんに面会なすったわけですが、どうでしたろうね。お手紙が待たれる次第です。五月に入って隆ちゃん行くようでしたら、やはりつづけていた方がよいでしょうね。この間のお手紙には、来てくれるなら本当にうれしいから、さしくって、ゆっくり出来るだけ永くいるようにして来いと仰云ってでしたが。私はこんなに丸いのだから半分ずつにして結構なのに残念ね。

〔欄外に〕一ヵ月ばかりのうちに同じこの紙が十銭もあがりました。

島田の生活はまるで変化ですから、私にとっていろいろ楽しくもあり、ためにもなり、見ることの範囲もひろがります、ああいう小さい町の家の女の生活というものは、島田ではじめて経験するのですから。北の地方とはそれに全然ちがうし。文化の古くからひらけているところと北方との相異はきつくて、東北ではあの位の町で、女はあんなにいい身なりをしません。ずっと富の程度がちがいます。諸形式もちがう。野原の家があって、あなたの少年時代は本当にようございましたね。島田のあの町の気分の中では、納まれず、或はじっくり育てなかったとはっきり感じられます。あすこは、何となし詰っている、そしてうのめたかのめです世俗的に。