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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

十三日には、午後一時半のサクラで出立。相変らず例の如く寿江子、栄さん送って来てくれ、後から思いがけなく、太郎その両親が現れました。太郎幼稚園がえり。アッコオバチャン送りにゆくかときいたら行くと云ったということで両親ついて来た。

特急は御承知の通り定員で切符を売って居りますから立つ人はありませんが、その代り一つも空いたというところがない。二人ずつ、つまりぎっちり四人向いあって、相当です。私のとなりに来合わせる人は、私を苦しめるだけでなく自身もよけいキュークツ故笑ってしまう。大陸との交通繁くて、こむこと! すぐ隣の席に女がいて私はチンタウに二十七年います、私は奉天に何年。あたい、あたいと云って特別に響く声を出して、我もの顔でした。

やはり盲腸のくされのなくなったのは有難いもので、大してそれでもつかれず。すこし体を休めたかったので広島からは二等にしました。ずっと真直かけたっきりで脚が切なかった、けれども、これは結局二等も同じです。やっぱり二人つまればなかなか楽でない。今のようにどうしたって一人でいられないように混むときには、三等もその点は同じという結論を得ました。