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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
農家は農作をやめて(土地を買収されたから)小金のあるのは、それで商売でも初めようとしているらしいが、ああいうところは大規模の購買組合をもっているのだからその点も大したことはないでしょう。裏の山をきりひらいて官舎が建つ由。
富ちゃんは、朝、この間うちは五時半、夜は八時すぎという働き(トロの数をしらべ、トロへ土の盛りようをカントクする、棒頭的な仕事)それが年度がわりの一区切りで十八日から六時半夕刻四時ということになったそうです。月給四十円、手当十円ぐらい。すっかり真黒になっている。そんな仕事でもそれだけよくやる。余りよくやるので合点が行かないようなので、いろいろ話したら富ちゃんの気持もいくらか判った。マア土地も整理され、すこし金も出来、これで一安心したから、これからは先のように一つ挽回してやろうという風で焦慮してジタバタしないですむから、四五十円でもかっちりとやってそれで暮して(暮せる由、叔母さん、せっせと小遣帖つけていられる)元はくずさず、やってゆき、自分の勤めも追々事務にうつることが出来る望みがあるという見とおしです。
一つ儲けて、家をとりかえすには株しかない。