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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
生活の内へ大分入って来て、そう嵩だかで、手の出ないという感じでない。
てっちゃん、やっぱりこんな本よんでいる話、していましたろうか。そう云えば、私の今日の手はすこし鉄さびやら蕗の渋やらがついています。うちの水はひどい鉄分で、アルミニュームのやかんにすっかり赤さびがついて湯の出がわるいわるいとお母さんが云っていらしたので、その中をすっかり洗いました。マアマアと皆びっくりした、よくこんなのでわかしたお湯をのんでいた、と。でも鉄は貧血症の薬だから、うちの人は皆貧血はしないでいいだろう、と大笑い。蕗はお母さんと、台所の腰かけで話しながらむいたの。わきの七輪ではタコがゆだっている。お湯からゆでると茹ダコの赤いのにならないとか、なるとか。その汁が松の木の緑を深めるというので野原の小父さまが御存命中、わざわざタコを買ってその汁をかけたとか、そんな話をしながら。うちの仲仕たちタコが好きですって。その御馳走。タコは骨を太くするんじゃげなと仰云るから、アラ、タコは自分が骨なしの癖に、と又大笑い。
『大阪朝日』へは『東京朝日』へ出る『中公』の公広など二十二日になって出るのですね。