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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

朝おきたら一寸した手紙、毎日(行く日はのかして)書こうと思います。ほんの一筆でも。そしたらそれらは毎日順について挨拶を送り、御機嫌伺いをするでしょう。朝出かける癖になったから私も淋しいから。それから勉強にとりかかるということにして。

書くものの下ごしらえしつつ、前からのつづきの読書又はじめます。先ず手紙かき、それからその本よみ。それから別の仕事。そういう順序でやってゆきます。

『都』の文芸欄の「大波小波」時々面白いものがあり、きょうは翻訳について書いたものがありました。『キュリー夫人伝』その他なかなか売れるその売れかたを日本作家の作品の売れかたとくらべて見ると、日本作家のものが木を見ているに対し、森を見んと欲する人間の心から買われている。人類的な面でものをとりあげている点で買われている。云々と。翻訳賞というようなものがあってもよいと云うことを云っているのですが。

今日真面目な文学らしい文学を求める心が一般に動いている、それとも相通じるものですが。真の文学の要求のつよさそのものが、他面にその生れ出ずることの困難性を語ってもいるわけです。ゆうべも稲ちゃんとそんな話になり、ロマンとこの頃、長篇小説という字にルビつけている、そういうロマンしか存り得ない。