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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
例えば、すのものをあっちでは実によくあがる習慣やお風呂のことや。お風呂にでも、芝居などすこし改った気分で出かけなさる前にはお風呂にお入りになりたいことなど。小さいことですが、やはりそのつぼが合うことは快適ですから。酢のもの、私はすっぱいから余り自分ではたべません。そんなこともね。今度は私もたんのうして居ります。あなたも随分御苦労様でしたが、その心持は同じでいらっしゃると思います。あなたにも手紙書くがとあり、二人の息子に上京日記をこまかく知らしてやりますともあり、若々しいお手紙でした。
いつぞや月給二百五十とかで赴任した人からも手紙が来ました。あっちには糧棧という農作物の特殊な中間媒介業があって、いろんな点でお百姓の生活に深く入って居り、この高利貸風な商売人は統制のため、小さいのはつぶれ、大きいのは益※(二の字点、1-2-22)強大化しているそうです。
私がシベリア鉄道での途中、一寸降りた長春の夜の町をぼんやり思い出しますが、今は特殊市という日本人だけの新設区があるのですって。住宅難で旅館暮し。勿論日本風。そこで臥起して、勤めに出て、勿論日本風、デパートに買物して、勿論日本風。