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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

いろいろ面白い。プラトーンなどが、作られるものの、質のより優良という点からだけ分業の価値を見たこととの対比が。昔々、プラトーンの「リパブリック」など哲学としてよんだ時代からぼんやり盲目窓のように立っていたものが、こういう現実的な光りでパッと開いたような面白さ。

五月十五日

家のぐるりの若葉の緑が一層濃さをましました。同じこの界隈でも、私たちのこの一隅は特別に木立が多くて新緑の美しいのは目っけものです。

平林彪吾という名でものを書いていた松元実が先日急になくなりました。何かの中毒から。

きのうは、おきまりの読書も七十頁ほどやり、又、別の小説一冊よみ。一日読み暮し。小説というのは上田広の「建設戦記」というので、これまでのものとちがって、鉄道部隊の活動に即して何日間かの経験を書いたものです。汽車という一つのものが中心となっているところ、おのずから他の場合の小説を思いおこさせました。そして、様々の危急や苦難に対して、肉体と精神の力をつくしてそれを克服してゆく努力そのものの姿。それはそれだけとして見れば最善のモーティヴによる生命力の発揮の場合やはりそうであるから、深い感想をさそい、一片の感傷ならぬ永い哀れを感じさせました。