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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
というのに何か書くのに、中條政恒という祖父のことを一寸かきました。西村の方は、会があったり自分で書いたりしていろいろのこっているけれども、東北の藩の出で、明治の初めは所謂羽ぶりのよくなかった方の小さい役人で、一生開墾事業に熱中して死んだおじいさんのこと。二人の祖父に、明治へのうつり代りが両面を映していて面白く思われます。西村の方は大礼服の写真。こちらの方は、フロックコート。そういう違い。細君の性格、子供の暮しそれぞれ全くちがいます。やや共通であったらしいのは、どっちの家でも曾祖母という人がしっかりものであった点。私は二人とも顔を知らず、いずれもおばあさんからの話が主です。おばあさんという人は、二人とも風流味がなかった。西村の方は家は茶の家の由。それでも祖母という人は低い現実家で、子供の愛情でも鼻先三寸の方で、老後はそのために幸福とは云えなかった人です。私なんかにでも「百合子さん何々おしかい」という風でね。中條のおばあさんは、貧しい武家暮しの間で風流を覚えるひまなく紋付の裾はしおりで台所働きをしつづけた人です。田舎の言葉で「百合子、お前のおっかさんの手紙は、ハアうますぎてよめねえごんだ」