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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

いつからか、五月の初旬、お母さんおかえりのとき入れた藤の花のこと伺おうと思い思い、ついおくれてしまいます、どんなのでした、藤色の? 今年は白藤一つも花をつけず。こっちの庭へつれて来ようかなどとも思います。あの白藤に房々とはじめて動坂の玄関に来たときのように花をつけさせて眺めたい。御異存ないでしょう? 樹は足かけ八年の歳月の間にずっと太っているのですもの。咲かしてやればどんな見事な花房をつけるでしょう。場所さえあれば棚にするのにね。われらその白藤のかげに憩わん。(あまり美文ですかしら。蜂にさされるかもしれないわね)

これから一やすみ。窓をあけて風をとおしているので、外の砂利をふむ人の跫音などがして、午前のしずけさがひとしお深うございます。図書館行は明日。きょうは家にあるだけの本をよみ。夜は林町の連中と自由学園の音楽会をききに出かけます。ここの音楽教育は有名です。だが、生徒を入学させるとき、先ず資産しらべをやる、そして云うことをきき、学園型になる子を選ぶ眼力にかけては、もと子夫人の旦那さん大したものである由。おむこさんである人が、ああいう心で「ミケルアンジェロ」