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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

ぬるくては舌ざわりよくないでしょうが。もし水につけておけたらいいけれども。種子だしてあがれるでしょう? そこだけとればいいから。あのしゃぼんいかがですか、もちろん届いているでしょう? 昨年と同じです。去年は夏のうちに一ヶしか使いませんでしたが、今年は二つつかいましょう、もうつかっていらっしゃるかしら。そんなこと些細とお思いでしょうが、生活のそういうなかでは、快い匂いというようなものは随分薬です。だから私はいろいろに考えるの、甘い匂いがいいかしら、それともスッとしたのがいいかしらなどと。そして、夏あついとき、こういう手紙の紙やインクの匂い、あついでしょう? 私はつかれているとき、原稿紙の匂い、インク、つかれを感じますから。手紙でも、かすかないい薫りを夏は送りたいと考案中です、昔の殿上人のように香をたきしめるわけにも行かないが、何かと思います。どう? おいやではないでしょう? 紙の色だって白でなくてはならないというわけもなし、でもよみにくくてはいやですが。

きょうの封筒、風変りでしょう、ユリの縞のこのみにやや近い。私は太い縞はきらい。瀟洒なところのあるのがすき。