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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

この頃オリザニンをのんで居ます。脚がむくむから。脚気というのではないらしいけれども。オリザニンというのは、体の疲れを直すのですってね、例えば歩くとか、何とかいうそういう疲れかたを。オリンピックのとき三共はオリザニンをうんと持たせてやったのですって、水泳なんか随分それでコンディションがよかったそうです。

きのうは髪を洗い、きょうはすべすべと軽い髪です。こう書いていたら思い出した。あなたは、髭がちゃんとそれたかどうかをしらべるユリ独特の方法、覚えていらっしゃいますか。

今葭戸が机の前にしまっていて、外に青桐の葉が嵐っぽい風にもまれているのが見え、手摺のところで、紫のしぼりの紐が吹かれています、いつもユリが帯の下にしめている紐、さっき洗ったのです、なかなか汗にしみるから。薄紅いタオルも同じ手摺で風にふかれています。このタオルは夜の汗ふきよう。この頃はあけがたの四時頃、背中がひーやりしてきっと目がさめます。ねまきの汗でぬれたのがつめたくて。そこでおきて、すっかり拭いて、ねまき裏がえしたり着かえたりして又すこし眠る、そのときつかうタオル。どこかで大きい音のラジオがきこえて来ます。