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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

そのために、傍聴者は家族のものと言っても、継続的に来るのは百合子一人、あとは、ときに応じて同志袴田の妻、秋笹の父兄という有様であった。

[自注26]呼びかけてくるわけです――公判がはじまって、勤勉に傍聴したことは、百合子にとって、思いもかけなかったほどの収穫となり、内面の階級的成長に役立った。

七月三十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

七月三十一日  第七十一信

さて、きょうは又この手紙を上野の大きい埃っぽい机の上でかきます。少し風があってしのぎよいようですが、そちらはいかがでしょう。昨夜珍しくねまきを着かえないで眠れたので、今日は体が楽です。一日外にいるときと家にいるときとそれだけちがうのでしょうか、それとも気候か。よくわからない。

けさはデパートのあく時刻に松坂屋へ行ってあなたの上布をかって、すぐ下の郵便局から速達にしてお送りしました。それから上野へ来たわけ。着物待ち遠しくていらしたでしょう御免なさい。その代り今召しているのよりずっとシャッキリして着心地よい筈です、大いに優待したのですから。

あなたはここへあまりいらしたことないでしょうね。