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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

この釘もないときに。ごく少数のしかも或る種の人々と集合する気も致しません。まあそういう工合で、非常に一般の空気をよく語っている、日常生活に対する、ね。いろいろ面白いでしょう? 世界の波濤のスケールが一方に大きく出ているから、きょうは猶更。白鳥が、日本の作家は皆それぞれの時代に何とか器用にかくれ家を見つけて頭を突こんで来ている、というようなこと書いています。白鳥が云うのだから、これも亦面白い。この人のはかくれ家どころか、そこが住宅なのですものね、本質に。

あなたはこの一二日のうち、おなかこわしなさいませんでしたろうか。昨夜、というよりきょうの明方大層冷えましたね。その故か、ここでは二人腹をこわしました。咲枝とおまつさんという女中と。大層痛んだそうです。どうだろうと頻りに考えます。大丈夫? どうぞお大事に。今年の夏は早くすぎました。夏に入ったとき、早くすぎればよいと思う心持でしたが。すぎかけたこの一夏を顧ると、味い尽きぬものを獲て来て居り、私は落付いた心持になって、その落付きは、自分がその正当さの輪廓だけ知って信じていたことの具体的内容が充実されることからの落付きという工合です。