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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

本年の正月は、計らずいろいろの大掃除があって、又珍しい新らしさがあります。年々の正月を思いかえすと何と多彩でしょう。歴史が何と色つよくかがやいているでしょう。この二三日すこし気分がしゃんとしてものをよみたい気も起って来て居ります、ではお話し初めをこれでおしまい。呉々も御元気に。

一月三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 慶応大学病院より(封書)〕

一月二日  第二信

きょうから雨か雪という天気予報でしたが、今は空が晴れて、僅かな白雲が東の方に見えます。きょうは、午前十時頃、初めて入浴しました、実にいい心持。傷口は軟膏と絆創膏を貼って。しかも、これは私があぶながってむき出しではこわがるので、おまじないのようにつけてくれたものの由です。むき出しで入浴してもういいのですって。

出て来てから一時間ばかり眠り、先生が見えて、手当をするとき鏡をとって眺めたら、おなかのよこに薄赤く十字がついていて、「十」の下に小さい「○」の絵この下のところにごく小さい穴が見えました。それは表面だけでもう深さはないとのこと。黄色い薬のついたガーゼをあててバンソー膏をつけて上から湿布してあるだけです。