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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

きょうはどうも詩集を手ばなし難うございます。たまにそういう日が、一日あってもいいでしょう、自分に向ってそう云っている次第です。あなたにしても、ユリがアンポンになってしんみりしているのをお想いになると、笑えるでしょう。笑うのは衛生にいいのよ。では又ね。

十月二十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

十月十九日  第九十六信

きょうは木曜日ですが出勤は又なし。

十四日の次の手紙ですが、あの全くつづきのようなの。どうしたのでしょうね。ずうっとそういう心持で暮して居ます。きょうは午後よっぽどそちらへ行こうかと思いました。疲れるといけないと思って辛棒したけれど。あなたが、よ。

どうかおわん、よく手にもって、よくくちをつけて召し上って下さい。それから退屈したり、ぼんやりしなくてはいけないようなときは、あの耳かきと櫛とを。櫛というものは髪を撫で、髪の間を指で梳く代りでしょう? 日向で、のびて、膝の上に頭をおいて。みみかきは優しいものだと思います。

山窩が又なかなか美しいのです。目にしみてしまった。何という美しさかしら。やや荒れた美しい庭の趣ですね。見て何と飽きないでしょう。