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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

『北極飛行』承知いたしました。隆ちゃんはやっぱり小国民文庫が気に入りましたようです、丁度いいと云って来ていますから、つづけてあの分を送ろうと思います。

私の「疲れた」。面白いわね。自分でもこの間迄はっきり心持のモーティヴ、知らなかったのですもの。詩集をひらくというような生ぬるいものではないのです、そのなかに顔を埋めるのです。そんな工合。

請求書は来ません、よこして下さいと云ってありますが。

稲ちゃん、友人の結婚の仲人をしたので十六日に式にかえっていて十七日にいたわけです。十八日ごろ又行った筈です。手紙よこさないからきっと仕事に熱中しているのでしょう。三百枚以上かくのに十一月十日ごろ迄とか云っていたが、出来るのかしら。あのひとは私などとちがってどっさり一日にかくから、別でしょうが。

栄さんも百枚以上の小説をかきました。このひとは実にストーリイ・テラーで、そのうまさは身についていますね。しかしもう一重ほり下げた心持を追う描写になるとだめです。不思議なくらいそっちはだめで、一方がすぐれている。だから題材とそれとがうまく結びつくと、今度のなども読むには面白いのです。