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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

これではやはり風邪のもと、ね。今市場からタラや野菜を入れた風呂敷づつみをぶら下げ、片方にはそこの古本やで買った本もって、かえってきたら汗ばみました。

さっき『新女苑』のひとが来て、芭蕉のことについて、つまりああいう芸術が日本人の心の一つの峰になっている、そのことについていろいろ書いてほしいと云います。面白いからひきうけた。私は、「伸子」時代相当傾倒したのだから。感覚の上でのことですが、現実をつかんでゆく。今どう考え感じるであろうと面白いからひきうけました。その内に入らず生活の今日の感覚で見て行って、そこに私のかく意味があるのですと思う。いろいろ云えそうで面白がっている次第です。芭蕉は女の生活などをどう見て感じていたのでしょうね。そういうことも、やはり心に浮いて来ます。

『文芸』に稲ちゃんが堀辰雄におくる手紙(相互的)かいていて(ロバ時代の旧友)。堀は稲ちゃんがアテネフランセにかよう月謝を出し、ときには自分で教えたのですって、西沢、宮木みんな驢馬。このロバはアルプスにかくれ住んだ詩人(名を堂わすれてしまいましたホラ――どうも出ない〔約二字分空白〕の驢馬の詩からとったもの、ロバこそは天国での上座にいる、勤勉な驢馬は、という詩(ああ、フランシス・ジャム。