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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

そういう話もなかなか面白いの。鑑子さんとは決して出来ない点にふれて喋っている。寿江子だって大人ですものね、考えて見れば。達ちゃんと二つ下でしょう? 五になりましたから。

達ちゃんの話、大変こころにつたわりますね。どうかしら。実現されるかしら。兄弟の心、兄の気持というもの。三人は仲よい兄弟たちであると感じます。その感じの裡には、そして、一語で云いつくされないものがこもっています。明日は、寿江子のことで林町へ行かなければなりませんから、神田へまわって送るものとりそろえ発送しましょう。三人の兄弟の上にも歴史は実にひろく深く、まわって居ることを考えます。

そちらにゆく袋の中に「チボー家の人々」というのを入れてよんでいます。長篇の或書かたとして研究的によんで居ります。ノーベル賞をとったのは、どのようなところの評価であるか全部よまないうちはわからないけれども、着実で同時に動的な構成、周密な立体的描写法など、ジイドの「贋金つくり」などのまがいもの的頭でっち上げ風なのとちがい、リアリスティックな筆致においても、一朝一夕のはんぱ仕事ではないことを感じます。全部で十巻ある予定です。