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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
星出さんの息子は一というのです。中條を何度直してやっても中将とかいて来るのよ。そういう学校が東京にだけあるのではないでしょうし、やっぱり東京へ出しておくというところに親の情愛があるのかもしれないが、あのゴタゴタの渋谷辺うろついて、と思います。いい身分なのね、でもきっと下宿で、さぞおなかのすくことでしょう。うちは丼に盛りきりの御飯で、来月からはそれも不足で私はペンをやめなければいけないかも知れません。この頃はバターもなかなかありません。段々丈夫になってよく勉強すると、私はおなかのへるたちだから間に合わないと苦笑ものです。
さて、これからすこし横になり、休み乍ら御接待方法を思案いたします。年とった人が結核になるというのは、やはりあり得る事情ですね。疲労を蓄積させないこと、規律ある生活すること、これが今のような営養不足の時の第一で、休んで補うしかありせん。それにつけても私が今半病人なのは、不幸を幸に転じることかもしれないと思って居ります。丈夫と思えばこんな生活は出来ませんものね、では又。
六月二十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(セイロンの仏教徒の写真絵はがき)〕