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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
そんなものを買ってくたびれてかえりました。国男さんはもう四日ほど床についていて、床の上から買ったものみて、たのしみだったと云っていました。鮮やかな出血だったので、痔だと思っていたのね。お医者も。この日はよかったのです。気分もわるくないのだったし。
三十日水曜日は疲れていたけれどほかに日はないしペンさんつれて、先ず上野松坂やへゆき、岩本御主人のネクタイを買い、初めて省線、小田急にのって北沢へゆき、一時間ほどいて、六時すぎかえって来ました。
そしたら入院するというさわぎです、駒込へ。あすこはカンづめになり何週間の規定の時日はかえれないのよ。咲それでは困るというし、さわぎがひどくなって困るし、決定したわけではないというのであすこの外科の宮川彪という先生にきいたら、今夜ぐらいは内科病室へうけとってやるというので、自動車迎えのこととり消せるかどうかと、来合わせた紀さんと一緒に駒込まで行ったらもう移牒してあるとのこと。咲枝はおろおろするたちなのよ。何だか一向準備がちゃんと出来ないであっちこっちしているうちに九時半ごろ自動車が来て入院しました。いい工合に一人の室があった由。