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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

本当によく気をつけ丈夫にしていなければなりません。

十七日はそんなわけで割合調子もよくなって居りました。せめて、てんぷらでもみんなに食べさせたいものと、二、三日がかりで奔走しましたが、休日と重るせいか、どこもかしこも休み。すしやさえありませんでした。

そこで、たべるものは何もなしとあきらめていたところへ、東北の友達のひとが出京して、珍らしくリンゴ七つその朝もらいました。今のリンゴはまアと歓声が上るのよ。それで何だかお祝いらしくて全くうれしくなりました。薄青いのや真赤なのや。遙々岩手から病気をしていた女のひとが癒ったともって来てくれたのですからおめでたいものなの。

雨でしたが、しずかなわるくない雨でしたでしょう? 咲と寿とは緑郎のお嫁さんの実家へことわれない招待で午後から出かけ、国と私、むかい合ってのんびりしていて、いろいろ事務所の話、私の借金の話、寿の話、などしました。この頃いろいろ話すのよ、あちらから。

そして夕刻になったら留守番の良人というものは落付きのわるいものらしくて、急にゴタクタの食堂を片づけようと云い出しました。

「私はまだ働けないわ、やめようよ」