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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
この大家の匠気はきらいです。ゴッホは春の杏の白い花をあの独特の水色と朱で何と美しく心をかたむけて愛し描いているでしょう。
菊は十七日の朝から飾られていて、私は机の前に坐って、やや右手の下方から眺めたり、夜、スタンドの灯のややほのかな逆光に浮立つ白さを眺めたり大いにたのしみました。ことしは美味しいものもなかったし、賑やかでもなかったけれど、美しさでは一等でした。その美しさは、私の心の中に盛に流動し、胎動している仕事の欲望とよく照応いたしますし、その上、その美しさをわたしがどううけとろうとそれも私の自由。
そうそうその上、二ヵ月ぶりのお手紙午後頂きました。いよいよあげるより頂いたお誕生日ね。
久しぶりで、ホラ
とみんなに披露いたしました。それからくりかえしよみ、小説のこと賛成していただいてうれしゅうございます。段々考えていると、すぐあのあとからひきつづき腰をおろして書いて見ようという気がおこりかけて居ります。それぞれの時期にそれぞれの問題があり核心的なテーマがありますから。あの頃ではわからなかったものもわかったところもありますし。「四十年」をペシコフはソレントでかきました。