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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
はあれとはずっとましです。一人の作家が、「時代の心理で動く」限界ということも文学発展史上の一つのテーマではないのでしょうか、ドストイェフスキー、バルザック、特にバルザックなんか最大の限界まで行っているのではないでしょうか、リアリストとロマンティシズムの奇々怪々な混乱においても。後代の、ことに、最近十年間の新しい文学の作家たちは、心理だけにモティーヴをおいて自身の生活を導いていないし、同様に自分たちの文学のモティーヴともしていません。それ故の、その大きい発展の故の苦悩、寡作というものがあるのです。新旧の文学の本質的なちがいは、こんなところにもあるのね。新しい作家たちと云えども、余り明確にこの線を自身の文学に引き得ないようなところがあって、いろんなところへずり込んだのね。これは、今かいているうちに自分にもはっきりして来たことですが、なかなか内容がある問題ですね。
新しい文学は、全く、心理描写だけで満足しないわ、ね。心理から入って、そのような心理あらしめているものを描破しようと欲しているのですから。もし高見順がその意味で、描写のうしろにねていられなかったのなら、相当なものであったわけですが。