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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

て便利して暮しているというものがない為か、にげてゆく先に一応はととのっているというからか、何もしないのよ。すこし運ぶと、もう一杯だ一杯だと云うの。だから、私は全く別箇に、親切な友人たちの助力で、どうしてもいるものは、ともかく比較の上で安全の多いところへ移すことにして、疲れない程々にやって居ります、あなたの冬着を心配してそれ丈はどうやら一番がけにうつしましたが。私にしろやはりふとんもきものもなくては、ね。金がないのなら、日常のものは大事ですから。私は、自分たちは一単位として、最少限の生活は又やれるようにと考えて居ります。

バルザックのこと。あなたもなかなか痛烈ですね、そんなに考えてもリディキュラスという風に描き出されて、私は何と御挨拶出来ましょう、そんな愚劣さが(読者として)即ちブランカの態度だよ、という程でもないのでしょう? 私は、そうだと思いかねるわ。御憫察下さい。

「あら皮」はおよみになったのね。作者の研究のために大切な一作でしょうが、作としてはつまりませんね。時代的な心理(あの人の時代の)の問題を、哲学と混同したり、人物は何だか人為的で。文章も初めのゴーチェ張りは閉口です、「幻滅」