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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
「何しろまだ病人対手なのだから」ということで、いく分面倒くささも減っているところもあるのです。多分六月一杯でおしまいでしょう。おっしゃるとおりひとり合点もあるといけないから自分としては何もきめた形で考えていず、体とにらみ合わせてやってゆきましょう。そんなに気をせき立ってもいないのよ、一頃よりはずっと楽に落付いて、いらいらもしないのだけれども、ついつい足が向きたくなるという場合もおこります。でもそのついもおやめにいたしましょう、ホラ又。ユリのアンポンというのでは、自分はともかく折角気をつけて下さるあなたに相すみませんから。
うちに、代って一寸心やすく行ってくれる人でもあるといいのですけれどね。この家も全く風変りだから。寿江子もこの頃体はわるいし、咲たちが国府津へ行ってしまって、どうしてもうちのことは肩にかかるしで、恐惶謹言的状態で、お使いはたのまれないし、厄介だし、滑稽だし。うちに、あたり前の人が一人いたらどんなに気が楽でしょうね。それが目下のところは自分というのだからお話になりません。私はあながち欲ばっているのでもないのよ、お察し下さい、特に近頃は来るなとおっしゃることもわかるから、それでも私が、なんて考えてはいないのよ。