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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

01 一九三四年(昭和九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,990 字 · 30 页

青空文庫

六畳の方に山田のおばあちゃん[自注10]のくれた机をおいて、四畳半へテーブルと、あなたのつかっていらした本棚をおきおさまっている次第です。二階の景色はよくてテーブルの右手の小窓をあけると、小学校の庭と建物越しに下落合の高台が見え、六畳の方の小窓からもそれにつづいての景色が一望されます。小学校だからチーチーパッパで、ときどきはやかましいが、清澄なやかましさで、神経には一向にさわりません。カンカンとよく響いて鐘がなったりしてね。窓から見ていると、友達にトタン塀の隅っこへおしつけられた二年生ぐらいの男の子がベソをかいて、何か喋っていることなどがあります。下の八畳も二階も、それはよく日が当って、実にからりとした私たちに似合った家です。家賃三十円也。井戸だし、少し不便だし、だからその位なのであろうという定評です。

達治さん[自注11]がこの一月二十日頃に入営することを叔父上がお話しになりましたか? その前に出来たらあなたに会われたらいいと思ったし(そちらにいつ頃まわるか私には見当もつかなかったから)母様の御出京の話もあったので、とりいそいで家をもったわけでした。