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げんだいのさじゅつ

現代の詐術

坂口 安吾

「個性 第一巻第一号」思索社、1947(昭和22)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,471 字 · 25 页

青空文庫

つまり矢島だけがサギ師であり、他の人々はサギにかゝった被害者だということになる。

このサギの性格は、又、これを利用するに大いに便利で、つまり倉庫に商品がないと分っていても、あると信じる条件がありさえすれば、自分にサギの意志はなかったと弁解できる性質のもので、世耕情報以来ブローカーの暗躍がものすごかったというが、要するに商品は実在しないのである。然し、私は実在すると思った、あの男からきいたから。その男は又、私は別のあの人からきいた、私も実在すると思っていた、みんな、こう答える。実在すると思いこんでいたとなればサギではないと言い張る方便があるから、人からきいた、そして信じた、みんなカンタンに信じた信じたと言う。

だからブローカーは現物など問題じゃない、情報を信じることが大切で、情報がうまく出来ていれば金になる、この連中は法律の知識もあり、罪にならない条件をなんとか用意する策戦はぬかりなく心得ている。

昔からありふれたのに手金サギというのがあったが、近ごろのは全額前払い、そう変ったゞけなのだろう。

昔は物が有り余っていたから、商人は売りこむのに苦心サンタン、たいがい勘定はアト払いで、手金などタカの知れたものだから、こんなサギはお歴々はおやりにならない。