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げんだいのさじゅつ
現代の詐術
「個性 第一巻第一号」思索社、1947(昭和22)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,471 字 · 25 页
サギではない、と。
然し法廷というところはトノサマの胸を解剖して心理を判断するという直接の方法を用いる術のないところで、人間の心理は、こう思った、思わなかった、それを直接つかまえ突きとめるという術はない。
だから側面から調べる。トノサマがどこそこの倉庫に紙があると云った、その倉庫に紙があり、それをトノサマが動かす力があったか、もしあればトノサマはいつか約束を履行するつもりであったかも知れない。倉庫に紙はなかった、そうなるとトノサマは怪しい。けれどもトノサマは倉庫に紙があると信じていた。そして信ずべき条件が揃っている、たとえばトノサマは誰かにだまされ、そこに紙があるものと思いこまされていた、そうなるとトノサマはサギ師でなく商取引の約束をまだ果していなかった、それだけだ、という弁解が成立つ可能性がある。
世耕事件の静岡の糖蜜問題がこのデンの好見本で、世耕氏へこの情報がくるまでに有村とか、佐伯、宮川、米本、渋谷、前田、永田などとリレーがあり、結局モトは矢島松朗というサギ師の組んだ仕事で、矢島のいう砂糖は実在するものではなかったが、三宅男爵という架空の人物や一条公爵などゝいう名が利用されて効果をあげ、人々はその品物が実在するものだと信じていた。