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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

すると、まんなかの社長席の青二才が、上から下まで彼をジロ/\ながめていたが、

「なア、オイ、雑誌の編輯の方は、どうだい? 例のマニ教の訪問記だよ。この人なら、もぐりこめやしないか。おい、みろよ、モーニング、ヒゲもあら。使えるじゃないか」

「なーる」

先刻の青年は合槌をうち、感にたえたかニヤリとした。三人の青年が、にわかに好奇の目をかゞやかして、彼の風采を上から下まで眺めはじめたのである。彼はまだ一言も喋らなかった。

ぶるぶると恐怖の胴ぶるいが走ったのは、そもそも、この時がはじまりであった。彼の平凡な一生に於て、こんな謎深い恐怖にかられたことはこの時まではなかった。

「ウン、いゝね。これは、いゝや」

青年はこう判定を下して、社長席の青年にニヤリと笑いかけた。

「じゃア、あなた雑誌の編輯の方、やって貰いましょう。雑誌の方は、ボクが編輯長なんです。それから、こちらが社長、そちらにいるのが業務部長、ボクら、みんな、まだ、大学生なんです」

なれなれしいものである。女性的なやわらかさであったが、彼はそれをマトモにうけとめることが出来なかった。白刃をつきつけられたような、わけの分らぬ恐怖がいつまでも背筋を這って止まらなかった。