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りそうのおんな
理想の女
豊島 与志雄
「新小説」1920(大正9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,162 字 · 77 页
私はもう嫌になる。「おい、お抱きよ、」と秀子へ云う。「知るものですか、勝手に起しといて、」と彼女は答える。私の方も意地になる。彼女の方も意地になる。子供はなお泣き立てる。はるが台所から出て来て、子供を抱く。私は不機嫌になる。いつまでも黙っている。やがて秀子ははるに云う、「そっと寝かして、用をしておしまい。むずかったらお父様が守りをして下さるだろうから。」私はそのあてつけに腹を立てる。子供は暫くおとなしく寝ている。やがてむずかり出す。遂には泣き出す。「子供を守りするのは女の役目だ、」と私は秀子へ怒鳴りつける。「子供をいじめるのは男の役目ですか、」と彼女は反問する。口論が初まる。私ははるを呼んで、子供を抱けと云いつける。「いいから用を済しておいで、」と秀子は云う。はるは秀子の方に従う。子供は泣いたまま放って置かれる。私は逃げ出すより外に仕方がない。「羽織を出しとくれ、出かけるから、」と秀子へ云う。「勝手にお出しなさるがいいわ、」と彼女は答える。私は箪笥の抽出から、むちゃくちゃに着物を引きずり出す。そして羽織だけを取代える。秀子は漸く立って来て子供を抱く。