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りそうのおんな
理想の女
豊島 与志雄
「新小説」1920(大正9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,162 字 · 77 页
――前年の年末に、秀子は、遠縁に当る家へと世話になった家へと二つの進物を整えた。一つは、二羽の鳩が古い汚い果物籠の中に押し込んであり、一つは二羽の鴨が進物用の綺麗な籠の中に並べられていた。後者に就ては私も文句はなかったが、前者に就ては少からず驚かされた。そして彼女にそのことを責めた。「これで沢山ですわ、」と彼女は答えた。私は説き立てた、普通の場合なら兎に角、年末の進物として他家へ贈るのにそんな不体裁なことは止したがいい、一層鳩だけにするか、または他方のと同種の立派な進物籠に入れるか、何れかでなければ先方の感情を害すると。然し彼女は平気だった、あの家へならどんな体裁ででも構わないと答えた。「それではお前の気持ちが済むまい、」と私は尋ねた。「何とも思いませんわ、」と彼女は答えた。それで私は、相手の如何によって自分の態度を二三にするのは最も下等なことだと、詳しく説き立てた。すると彼女は、態度は相手によってきめるべきであって、一つの態度で世の中を渡れるものではないと、反対に主張しだした。そして彼女は私の言には頑として応ぜずに、汚い籠のまま鳩を贈ってしまった。