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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
と、そのうちの一人であったが、群より離れて素早く走り、茅野雄の背後へ追いつくや、茅野雄の後脳を二つに割るべく、刀を冠って振り下ろした。
しかし茅野雄に油断があろうか、逼って来た足音で自ずと解った、振り返ったと見るや片手撲りだ、敵の真っ向を朱に染め、その隙にこれも追いついて、前後から切り込んで来た二人の敵の、前の一人を袈裟に斃し、引き足もしない同じ位置で、ブン廻るように廻ったが、後ろの一人の腕を落とした。
「待て! 弦四郎!」
一散に走り、追い詰めると颯と前へ出て、行く手を扼したが大音声だ。
「娘を放せ! 切って来い! 汝の味方を五人斃した、茅野雄は汝が敵であろうぞ! 遁しはしまい、拙者も遁さぬ! 逃げても切るぞ来ても切る!」
――で、グ――ッと刀を冠った。
と、その刀と向かい合って、一本の刀が茅野雄の眉間へ、切っ先を向けて宙へ浮かんだ。もういけないと観念をして、小枝を地上へ抛り出し、抜き合わせた醍醐弦四郎の、正眼に構えた刀であった。
上と下とで二本の刀が、凄じい気合で拍子取っている。刀の切っ先を真直ぐに越して、茅野雄を睨んでいる弦四郎の眼と、刀の柄頭の下を通して、弦四郎を睨んでいる茅野雄の眼とが、互いに相手を射殺そうとしている。