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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
しばらくは二人とも動かない。
で、天地が寂然と、にわかに眠ってしまったかのように、二人には感じていなければならない。
しかしそれにしても弦四郎と一緒に、茅野雄を襲った丹生川平の、九人の男達はどうしたことであろう?
そのうちの五人は茅野雄のために、今までに斃されてしまったが、後にまだ四人残っているはずだ。何故茅野雄に切ってかからないのであろう? 茅野雄の手並に驚いて、いずこへともなく逃げたのであろうか? 逃げたと云わなければならないかもしれない。四人ながら一散に大森林の方へ、今や走っているのであるから。
その大森林の向こうの側に、丹生川平はあるのであった。
走って行くのは事実であったが、逃げて行くのだとは云われないかもしれない。
四人バラバラに森林の中へ入ると、四方八方へ駈け廻って、手に石を拾い取ると、一種の合図めいた調子を取って、老木の幹を叩きつづけたのであるから。
と、どうだろう、遥か奥から、それに答えでもするかのように、同じ一種の合図めいた、調子を持った木を叩く音が、木精を起こして聞こえてきた。が、もし誰かが森林の奥へ、さらに踏み入って耳を澄ましたならば、一層に森林の奥の方から、同じような音の聞こえてくることに、感付いたことに相違ない。