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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

さて今そういう娘の浪江と、茅野雄とが話していたところへ、醍醐弦四郎が現われて来て、話の仲間へ加わったのである。

「いや貴殿は悪人でござるよ」

茅野雄は磊落の性質から、こだわろうともせずこういうように云った。

「ナーニ拙者は好人物で」

弦四郎も今日は陽気であった。もっともいつもこの侍は陽気で駄弁家で道化者であって、それを保護色にはしていたが。

「たとえば貴殿と浪江殿とが、そのようにいかにも親しそうに、まるで恋人同志かのように、お話をしているのを見ながら、拙者嫉妬をしないというだけでも、好人物であると云うことが、お解りになるはずでござる」

「馬鹿な!」と、茅野雄は苦々しそうに云った。

「浪江殿と拙者とは従兄妹でござるよ。仲よく話すのは当然でござる」

「そうとばかりも限りますまいよ」

どうしたのか弦四郎はニヤニヤ笑った。

「案外親戚というものは、表面仲をよくしていて、裏面では仲の悪いもので」

神殿の中の物?

「そういうものでござるかな」

茅野雄はうるさそうにすげなく云った。

が、弦四郎は云いつづけた。

「親戚の一方が出世をすると、他の一方が嫉妬をする。親戚の一方が零落すると、他の親戚は寄りつかない。