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せいかつのなかにあるびについて
生活のなかにある美について
宮本 百合子
「アトリエ」1941(昭和16)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,372 字 · 9 页
署名もない、そこいらにあるものに、どんな美しさがこもっているかということ。つまりは美を生み出してゆく可能力がどの程度まで豊饒に一般の生活感情の内にはらまれているかという点が、問題になって来るのである。今日の日本では一般の生活感情が動揺しているとともに、そこにふくまれている創意性も複雑な転変を経験しているのが実際であろう。
ひとの話では、染色の技法は今日或る転機に面しているそうだ。これまでは、刺繍だの金銀泥が好きなだけつかえて、染料の不足もなかったから、玄人とすればいろいろ技法を補い誇張する手段があった。ところが、統制になって、そういう補助の手段が減って来たために、専門家は愈々純粋の染色技術で行かなければならなくなって、ここで本当に腕のある熱心なひとは、必ず一つの進歩をとげることが期待されているのだという話であった。しかし、そこに又むずかしいこともあって、商売である以上、採算がとれるとれないのことが念頭にある。素人にとって何のちがいも分らない骨折りを、仕事への良心のために、敢て重ねてゆく工人は果して何人あるだろう。しかも、そういう迂遠な道を厭わぬ人たちによって、染色という技術の水準は守られ高められてゆくのである。