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たざきそううんとそのこ

田崎草雲とその子

吉川 英治

「文藝春秋 夏期増刊号」1932(昭和7)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,568 字 · 40 页

青空文庫

離の小宴笹の雪に 悲しむ勿れ万歳一升の酒

離の小宴笹の雪に

悲しむ勿れ万歳一升の酒

幕末日本の象徴のように、浅間山は、噴煙を吐いていた。

館林の秋元藩の木呂子退造、塩谷良幹、相場朋厚その他を加えて、七名の士が、そこの麓に落会っていた。足利藩の田崎草雲は、江戸から加わって、盟友たちに、藩論の一致の吉報を、その軍議の密会に齎して行ったのである。

錦旗の東征は、もう時間の問題である。

西、長州と呼応して、すべての聯絡は、とれていた。そして、佐幕色の多い東北諸藩の中にあって、小さいながらも、この二つの藩は、勤王で一体になることを誓った。

すべての手はずをあわせて、草雲は、足利へ帰った。第一に、彼が着手したのは、先に、誓いを残した少壮の十一人組を中心とする、民兵赤誠隊の編成だった。

山藤三之助、戸叶角蔵、須水広吉、荻野佐太郎、大山岩次郎、山口喜太郎。――そういう人々に、草雲の門人たちと、商家、百姓の子弟が、二百人以上もすぐに集った。

その頃、新式の元込銃は、一挺が二十五両だった。貧乏な戸田藩では、隊は、編成されても、新式の銃器を買って、兵に持たせることができなかった。

民兵隊の兵は、軍費、服装、自分持ちだったのである。