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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
「早稲田文学」1914(大正3)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,947 字 · 76 页
そしてそれを云う時にはいつも眉を顰めて、ほとんど泣き出しそうにした。
「ほんとにうるさいんでございますよ。昨夜なんかも終夜雨戸のそとでごとごとやっているんですもの。」こんな事を女中達が云う事があった。しかし、その口振りには何となくそれほど気にしているらしくもないので、それが房子には酷く不審に思われた。
「どうかできないんですの?」
こう彼女はよく父や母に訴えた。
ある家では、乱暴にも女中部屋の窓を打ち破って闖入した者があった。そこの家では、困り果てたので大きな犬を他家から貰って来て飼った。すると、一週間も経たぬうちにその犬は村の若い者どものために人知れず殺されてしまったとの事であった。こんな噂さが房子の耳にも入った、房子は歯を喰いしばって身を慄わした。顔色が蒼くなった。「……とても我慢ができるものか。こうなっては、もう一刻もそのままにさせて置くわけにゆかない。どんな方法をしても、……ピストルでも放すほかはない。……よろしいとも!」こんなふうに考えるほど激昂した。
「今日、これからすぐに駐在所へ誰かをやって下さい。そしてお巡査さんに今晩からよく見廻りして貰うようにして下さい。