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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
「早稲田文学」1914(大正3)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,947 字 · 76 页
家の裏手の方で、急に房子のけたたましい悲鳴が聞かれた。「それ、何事が起った!」というので時を移さず家の者は一人残らず履物を穿かずに飛び出して行った。
人々はどんなにか吃驚した事であったろう。房子は、物干のところで、まるで死体のようになって地べたへ打っ倒れていた。慌てて水を吹きかけるやら、気つけを飲ませるやらしてようやくにして蘇生させた。家の中へ連れ込んで来てからも、房子は瞳をぶるぶるふるわして物を云う事さえできないようすであった。家の人達には、房子が何でそんな事になったのだか、ずーっと後まで解からなかった。何でも何か干物の入れ忘れていたのを急に思い出したので、もう日が暮れていたがすぐ二十足も歩けばよい所なので提灯を持たずにそれを取り入れに行くと、どこかの物蔭に隠れていた一人の若い者が急に忍び寄って来て、いきなり房子を抱き上げた。それでびっくりしたままに思わず大声あげて叫び出したのであった。がそのあとはどうなったのか彼女自身にもわからなかった。
房子は、すぐに寝床の中に横にされたが、しばらくすると非常な大熱になった。氷嚢で、取換え取換え頭を冷してやった。