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おとこぎらい

男ぎらい

豊島 与志雄

「苦楽」1949(昭和24)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,878 字 · 18 页

青空文庫

「おばさんじゃ信用ならん。美枝ちゃんはどこへ行った。」

おーい、美枝ちゃん、と呼ばれて、私は隠れてるわけにゆかず、出て行きますと、顔を知ってる人たちです。

「倉光君は来ていないのかい。」

「ほんとに来ていないんだね。」

「どこかに隠れてるんじゃあるまいね。」

一度に問いつめられて、私は困りました。

「美枝ちゃんがそう言うなら、ほんとだろう。も少し待ってみるか。」

そしてウイスキーをつがせられてるうちに、誰かが、ダンスをしようと言い出しました。私はダンスは知りませんし、男のひとなんかと踊りたくもありません。しかしつかまってしまいました。お島さんがレコードをかけます。何のレコードだって構やしません。卓子を少し片寄せて、そこの狭い土間で、ただ動きまわるだけです。私をまん中にして、ぐるぐる廻ります。

「樽御輿だ。ワッショイ、ワッショイ。」

「なに、姫御輿だ。ワッショイ、ワッショイ。」

私は姫御輿にされ、皆から取り巻かれ、肩や腰に手をかけられぐるぐる廻らされます。その男たちの、ねばねばした手が私の手に触れ、くさい息が私の顔にかかります。厭らしくて穢ならしくて、私はけんめいに逆らいますが、放してくれません。