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まちのしんり

町の真理

小川 未明

「帝国教育 589号」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,120 字 · 7 页

青空文庫

いつしか桜の葉は黄ばみかかって、なかに、虫ばんでいるのもあれば、風もないのに、力なく落ちるのもありました。

「おまえは、光琳の絵を見たことがあるか。」と、叔父さんは、甥にききました。

「よく、絵画雑誌に載っている、写真版で見たことがあります。」

「写真版では、うまみがよくわからんが、気品があるだろう……。」と、叔父さんがいわれた。

「なかなか、豪華でいいと思います。」と、学生は答えました。

「そう、豪華じゃ。」

二人は、博物館の前の通りを歩いていました。

「おまえは、どこへゆくつもりじゃ。」と、叔父さんは、立ち止まってきかれました。

学生は、美術館に、いま開かれている洋画の展覧会を見たいと思ったのです。

「博物館に、いま光琳・抱一など、琳派の陳列があるのじゃがな。」と、叔父さんは、博物館の門のある方をつえで指しました。しかし、その方には、人影が少なくて、寂しかったのです。そして、青年や若い女たちは、うららかな秋の日の光を浴びながら、旗の立っている美術館の方へと、あとからあとから、つづいたのでした。

「僕は洋画を見たいのですが、叔父さんもごらんなさいませんか。」と、学生は、いいました。