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ちょうないのにてんさい

町内の二天才

坂口 安吾

「キング 第二九巻第一四号」1953(昭和28)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,836 字 · 26 页

青空文庫

長助は中学二年生だ。二年ながらも全校の主戦投手じゃないか。その上に三年生というものがありながら、長助のピッチングにかなう者が全校に一人もいねえな」

「全校たって女もいれてただの四五百じゃないか。このせまい町内だけをチラッと見ても、ブリキ屋の倅、菓子屋の次男坊、医者の子供、フロ屋の三平、ソバ屋の米友、鉄工所のデブ、銀行の給仕、もう、指の数が足りねえや。長助なんぞの及びもつかない凄いタマを投げる奴は、くさるほどいらア」

「フロ屋の三平、三助じゃないか。ソバ屋の米友は出前持だ。鉄工所のデブは職工じゃないか。みんないい若い者だ。大人じゃないか」

「大人が、どうした。天才てえものは、鼻たれ小僧のうちから、広い日本で四千人に一人でなくちゃアいけねえものだ。長助のヘロヘロダマにまさるタマを投げる者なら、人口ただの十万のこの市だけでも四千人ぐらいはズラリとガンクビが揃ってらア。八千万の日本中で何億何万何千何番目になるか、とても勘定ができやしねえ」

「へ。いまだにカケ算ワリ算も満足にできねえな。お前は小学校の時から算術ができなかったなア。どうだ。九九は覚えてるか。な。碁将棋は数学のものだ。