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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
」
「そうです。前の洋服がその女殺しの犯人だったのです。とうとう追いつめられて、ピストルで探偵を二発撃ったがあたらないので、もうこれまでと思ったらしく、今度は自分の喉を撃って死んでしまったのです。」
親父とわたしとは顔を見合せてしばらく黙っていると、宿の亭主が口を出しました。
「じゃあ、その男のうしろには女の幽霊でも付いていたのかね。小児や犬がそんなに騒いだのをみると……。」
「それだからね。」と、重兵衛さんは子細らしく息をのみ込んだ。「おれも急にぞっとしたよ。いや、俺にはまったくなんにも見えなかった。弥七にも見えなかったそうだ。が、小児はふるえて怖がる。犬は気ちがいのようになって吠える。なにか変なことがあったに相違ない。」
「そりゃそうでしょう。大人に判らないことでも小児には判る。人間に判らないことでも他の動物には判るかも知れない。」と、親父は言いました。
私もそうだろうかと思いました。しかしかれらを恐れさせたのは、その旅人の背負っている重い罪の影か、あるいは殺された女の凄惨い姿か、確かには判断がつかない。どっちにしても、私はうしろが見られるような心持がして、だんだんに親父のそばへ寄って行った。