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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页

青空文庫

その退屈がだんだんに嵩じて来た第三日のゆう方に、倉沢は袴羽織という扮装でわたしの座敷へ顔を出した。かれは気の毒そうに言った。

「実は町にいる親戚の家から老人が急病で死んだという通知が来たので、これからちょっと行って来なければならない。都合によると、今夜は泊まり込むようになるかも知れないから、君ひとりで寂しいだろうが、まあ我慢してくれたまえ。このあいだ話したことのある写本だがね。家の者に言いつけて土蔵の中から捜し出させて置いたから、退屈しのぎに読んで見たまえ。格別面白いこともあるまいとは思うが……。」

彼は古びた写本七冊をわたしの前に置いた。

「このあいだも話した通り、僕の家の六代前の主人は享保から宝暦のころに生きていたのだそうで、雅号を杏雨といって俳句などもやったらしい。その杏雨が何くれとなく書きあつめて置いた一種の随筆がこの七冊で、もともと随筆のことだから何処まで書けばいいということもないだろうが、とにかくまだこれだけでは完結しないとみえて、題号さえも付けてないのだ。維新の際に祖父も大抵のものは売り払ってしまったのだが、これだけはまず残して置いた。