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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页

青空文庫

わたしはお先へ失敬します。」

行きかけるのを、山岸は引止めました。

「それじゃあいけない。まあ、附き合いに来てくれたまえ。鰻を食うばかりじゃない、ほかにも少し話したいことがあるから。いや、嘘じゃない。まったく話があるんだから……。」

断り切れないで、私はとうとう鰻屋の二階へ連れ込まれました。

二

ここで山岸とわたしとの関係を、さらに説明しておく必要があります。

山岸はわたしと同じ下宿屋に住んでいるという以外に、特別にわたしに対して一種の親しみを持っていてくれるのは、二人がおなじ職業をこころざしているのと、わたしが先輩として常に彼を尊敬しているからでした。わたしも将来は弁護士として世間に立つつもりで勉強中の身の上ですから、自分よりも年上の彼に対して敬意を払うのは当然です。単に年齢の差があるばかりでなく、その学力においても、彼とわたしとは大いに相違しているのでした。山岸は法律上の知識は勿論、英語のほかにドイツ、フランスの語学にも精通していましたから、わたしはいい人と同宿したのを喜んで、その部屋へ押しかけて行っていろいろのことを訊くと、彼もまた根よく親切に教えてくれる。