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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页

青空文庫

さっき聞き落したのですが、一体その髪の白い女は試験場にかぎって出現するのか、あるいは平生でも山岸の前に姿をみせるのか、それを詮議しなければならない事です。山岸の口ぶりでは、平生は彼女と没交渉であるらしく思われるのですが、それも機会を見てよく確かめて置かなければなりません。そんなことをいろいろ考えているうちに、近所の米屋で、一番鶏の歌う声がきこえました。

あくる朝はゆうべの風のためか、にわかに冬らしい気候になりました。一夜をろくろく眠らずに明かした私は、けさの寒さが一層こたえるようでしたが、それでも朝飯をそうそうに食って、いつもの通りに学校へ出て行きました。その頃には風もやんで、青空が高く晴れていました。

留守のあいだに何事か起っていはしないかと、一種の不安をいだきながら、午後に学校から帰って来ますと、堀川の一家にはなんにも変った様子もなく、伊佐子さんはいつもの通りに働いています。山岸も自分の部屋で静かに読書しているようです。私はまずこれで安心していると、午後六時ごろに伊佐子さんがわたしの部屋へ夕飯の膳を運んで来ました。このごろの六時ですから、日はすっかり暮れ切って、狭い部屋には電燈のひかりが満ちていました。